EBM(Evidence Based Medicine)・・・ 文字通り根拠にもとづいた医療の意味です.例を挙げると,たとえばそれまで大差なかったいくつかの集団.たとえば1年1組と1年2組で,どちらも同じに見えるチューヴに入った歯磨き剤で歯ブラシをしたとします.実は片方の歯磨き剤のなかにはフッ素が入っていました.一年間たった後,ふたつのグループのうちで片方が明らかにムシ歯発生率が少なかった.しかもそのデータに再現性があった.つまり他の場所で同じ実験をしても同じ効果が現れたとすると,これをEvidence(根拠・証拠)とします.当院予防歯科のページでも,O大名誉教授M先生の,車いすで来院された患者さんをたちどころに起ち上がらせるといったエピソードで,EBMについて説明しております.ただし,学会などで何人かの専門家が集まり皆が口をそろえてある薬に効果があると言いました.でもこれは実証されていませんので,単にコンセンサスであってEvidenceではありません.このように現代の医療は,可能な限りEvidenceをもとに次項のインフォームド・コンセント (IC: informed consent)を経ておこなわれてゆきます.
informed-consent : IC(医師による治療法の充分な説明と,患者さんの治療に対する納得の上での同意)・・・インフォームド・コンセントとは,十分な説明を受けたうえで患者さんご自身が最終的な診療方法を選択していただくということです.患者さんは自分の病気と医療行為について,知りたいことを“知る権利”があり,治療方法を自分で決める“決定する権利”を持っています.個人主義の意識が高いアメリカで生まれ,日本でも1980年代半ばから,患者の立場に立った医療を考え実践していくために,インフォームドコンセントの必要が認識されてきました.インフォームド・コンセント (IC: informed consent) とは,医療行為(投薬・手術・検査など)について,患者さんが治療の内容をよく説明を受け理解した上で(informed)治療に同意する(consent)事です.説明の内容としては,治療法の名称・内容・期待されている結果のみではなく,副作用や成功率,予後までも含んだ正確な情報が与えられることが望まれています.日本語にすると,「説明と同意」や「納得診療」などがあげられますが,現状ではこれらの言い換え語自体が日本語として根付いてはいないほか,「情報を与えられ理解し,承諾を行う」という元々の英語のニュアンスが出ていないために批判を受けることもままあります.
ICは,従来の医師の絶対的権威に基づいた医療を改め,患者の選択権・自由意志を最大限尊重するという前提に基づいています.説明する側は,予想される良い結果のみならず,副作用や合併症などの予期しない結果についても十分な説明を行い,同意を得る必要があります.また同意をいつでも撤回できることが条件として重要です.こうすることで初めて,自由意志で治療を受けられることになります.
インフォームド・コンセントすることで,納得して治療法の選択が可能となります.最近では,インフォームドコンセントに関心を持つ人が増えています.インフォームドコンセントは,自分のことは自分で決める自己決定権のことです.治療を受けるに当たっては,希望と決意を明確にしたいものです.
ただし,もともとは個人の権利に対する意識が高いアメリカで生まれた概念ですので,日本では成立しにくい一面もあります.米国と日本では,医師と患者さんの関係が大きく異なり,日本式にとらえてしまうと,インフォームドコンセントの本来の理念は失われてしまう危険性があります.日本の医療の現場でインフォームドコンセントを考えるとき,最優先されるのは患者の意思であることに違いはありません.そしてより良い治療を受けるためには,患者は進んで説明を受ける必要があります.治療法が幾つかある場合は,それぞれの治療期間や治療効果などの説明を受け,生活の状況に合わせて,自分が最も望む治療法が選択できるのかどうか 治療中や治療後の再発や合併症の有無 治療中や治療後の生活の中で,気を付けなければならない注意点などの説明を受け,十分納得した上で治療法を選択しましょう.患者さんの治療に対する積極的に責任を持って決めたいという希望と決意が,明確に意思表示される医療の場であることが,これからの日本のインフォームドコンセントの課題でしょう.
second-opinion(セカンドオピニオン・第2の診断)・・・ ご自分の病気をよりよく知るために,現時点での自分の病状や治療方針について,現在受診中の医師とは別の医師に意見を求めることをセカンドオピニオンを採るといいます.そのメリットとしては.病気の理解を深めるために主治医以外の意見を聞いて情報収集できることがあります.また主治医の診断や方針に対する確認ができる・治療の妥当性を確認できる・主治医の示す治療法以外の治療法が得られる可能性があるなどがあげられます.
正中・・・ 左右中切歯の真ん中.
近心・・・ 正中により近い方.生物学でいう腹側(ventral)
遠心・・・ 正中からより遠い方.生物学でいう背側(dorsal)
オーバージェット(overjet)=水平被蓋・・・ 上下顎切歯切端間の水平的距離
オーバーバイト(overbite)=垂直被蓋・・・ 上下顎切歯切端間の垂直的距離
Edward H. Angle・・・ 現代歯科矯正学の父.矯正歯科の歴史は,Edward H. Angleが1900年にセントルイスにあらゆる大学から独立して矯正歯科の学校を設立した時点でスタ−トしたといわれる.Angle の分類が有名.
Angle の分類・・・ Edward H. Angleは,上顎第一大臼歯を咬合の鍵とし,下顎が近遠心的に正常である場合を1級.下顎遠心咬合を2級.下顎近心咬合を3級とした.
Tweed's triangle(Tweed 三角)・・・ Edward H. Angleの高弟だった Charles H. Tweed は,眼耳平面=フランクフルト平面(フランクフルトで人類学会があった時に決まった眼科下縁と耳珠上縁を結んだ線で直立歩行する際に地表とほぼ水平になるとされる)と下顎下縁平面のなす角(FMA),下顎中切歯歯軸と下顎下縁平面のなす角(IMPA)とフランクフルト平面と下顎中切歯歯軸のなす角が,それぞれ30°・90°・60°であることを理想とし,矯正治療のゴールとして設定した.
Arch Length Discrepancy(アーチ・レングス・ディスクレパンシー)・・・ 下顎左右の第一大臼歯近心のコンタクト間の歯列弓上における長さをAAL(Available Arch Length=排列可能なアーチの長さ)とする.左右の1=中切歯から5=第二小臼歯までの歯間幅径の合計をRAL(Required Arch Length=すべての歯を排列するのに必要なアーチの長さ)とする.ALL=RAL-AALであらわされる.
Head Plate Correction(セファロ上の修正値)・・・ 矯正歯科治療の最終目的である咀嚼機能の回復・生涯にわたる歯列の安定性・口腔周囲筋の自然なバランスからなる顔の審美性の獲得を達成するための下顎中切歯の位置づけ.下顎下縁平面と下顎中切歯のなす角(IMPA)を90°にすることを目標として2.5°を1mmに換算して上述のALDに加算してtotal discrepancyとする.下顎下縁平面の傾きが急であったり緩やかであったりすることで影響を受けるため,L1-NB(下顎中切歯切縁からN=前頭鼻骨間縫合とB=下顎歯槽基底部最前方点を結んだ線までの垂直距離)=4mmにて補正する.
用語集は,将来にわたってすこしづつ加筆してゆく心積もりですので,よろしくおたのしみに・・・.