矯正治療中には,歯の周りの骨の改造(つくりかわり)がおこります.これはちょうど赤ちゃんが大きくなってゆくのと同じような現象です.きちんとバランスのとれた栄養素を取っていないと,骨の改造がうまくいかずきちんと治らないばかりか,長い治療期間がかかってしまいます.
矯正治療中,歯の周りの骨が改造するためには,カルシウム・マグネシウムなどのたくさんのミネラルが必要です.ところが現代の日本人は、食生活の変化などが原因で慢性的にミネラルが不足しています.なかでも顕著なのがカルシウムの不足です.厚生省が毎年行なっている「国民栄養調査」によると,日本人のカルシウム平均摂取量は,成人1日あたりの所要量とされる600ミリグラムに対し、550ミリグラム程度しかありません.
ただでさえミネラルが足りないのに,たくさんのミネラルが必要とされる矯正治療中,気をつけてミネラルの補給を心掛けないと歯が順調に動かなくなるばかりか,将来骨密度の減少から,特に女性では骨粗鬆症が心配されます.
血中カルシウム濃度は,PTH(副甲状腺ホルモン)とCT(カルシトニン)というふたつのホルモンによって常に一定に保たれています.たとえば静脈のなかに高濃度のカルシウムを注射しても,5分と経たないうちに元の血中カルシウム濃度に戻ってしまいます.これは,CTが血中カルシウム濃度があがったことにすぐに反応して,余分なカルシウムを骨の中に蓄えたためです.この逆に血中カルシウム濃度が低くなると,PTHが活性化されて,あっという間に骨の中からカルシウムを溶かしだして血中カルシウム濃度が,低くなりすぎるのを防ぎます.
PTHによる血中カルシウム濃度の調節は,たとえて言うなら銀行の自動融資ににています.ただし自動融資では,電気代¥10,000を入金し忘れたときには¥10,000だけ補てんされますが,PTHは残念ながら,それほど細かい計算はできません.たとえ¥10,000だけしか不足していない場合にも,一回PTHが活性化するとそれこそ¥1,000,000単位で骨に蓄えてあるカルシウムを溶かしだしてしまいます.
一時,カルシウム神話と言われるほどに,カルシウムのとりすぎが心配されたことがありました.これはミネラルに限らずすべての栄養素について言えることですが,一番大切なのはバランスです.アメリカでは,1日摂取量をRDA(Recommended Dietary Allowance)として設けていますし,我が国の厚生省でも平成12年からカルシウムの最大摂取量を規定することになりました.カルシウムをとりすぎると,高カルシウム血症をおこし慢性疲労・全身浮腫(むくみ)などの症状が出ます.ここで大切なのはカルシウム対マグネシウムの 2 : 1のミネラルバランスです.
マグネシウム
案外知られていないのが,ミネラル・ウオーターがミネラルの補給に,最良の手段であるということです.
もちろん,牛乳や小魚でもいいですが,牛乳は育ち盛りの人でしたらいいのですが体重の増加が心配されます.また小魚や乾燥エビは,カルシウム含有率はとても高いのですが,イオン化していないため素通りしてしまう部分が多く,吸収率から言うと極端に低くなってしまいます.
矯正治療中に限らず,正しい食生活を営むことは自分の生命に対して責任を持つことです.特に「美人も7割は水」といわれるように,ピュアな水を摂取することはミネラルバランスをコンシャスすることと相まって特に重要なことです.
ミネラル・ウオーターといっても,残念ながら火山国であり,地層にミネラル含有量の少ない日本のものはお勧めできません.カルシウムとマグネシウムの含有量を合計した値を硬度と言いますが,硬度の低いいわゆる軟水である日本のミネラル・ウオーターはお茶や水割りなどにしたときの味はとてもいいのですが,ミネラルの補給の点からはお勧めできません.
数あるミネラル・ウオーターの中では,カルシウム含有量が高いヴィッテル・コントレックス・エヴィアンなどがお勧めです.矯正治療中にはヴィッテルがベストでしょう.下の図はカルシウムの吸収率をヴィッテルと牛乳で比較したものです.図からわかるとおり,カルシウム含有率は牛乳の方が4倍と断然高いのに対して,吸収率でみるとヴィッテルのほうが4倍高いため,結果的にはヴィッテルを飲めば牛乳を飲んだときとほぼ同量のカルシウムが摂取できることになります.
より沢山のカルシウムの摂取が必要な妊娠授乳中の方や,骨粗鬆症が心配な方はコントレックス
がお勧めです.スーパーなどではあまり見かけませんが,ネットから注文できます. コントレックス / コントレックス(CONTREX) / ミネラルウォーター...
硬度の高い水は,硬度の低い水を飲み慣れた人には最初取っつきにくくまずく感じるものですが,慣れてくると軟水では物足りなくなりやがて硬水でなければすまなくなります.
患者さんの中でも時に驚くほど早く歯が動く人がいます.聞いてみると牛乳が好きだったりすることが多いです.また3歳児歯科検診の時にあまりにきれいな歯だったために,逆にこちらからお母さんに質問したこともありました.ミネラルウオーター以外飲ませたことがないというのが回答でした.
最近豆乳がマグネシウム補給の有力候補であることが判明し,「豆乳を飲もう!」,「豆乳の摂取法」として Blog でも紹介させていただきました.
ではいったいなぜこのような高度のコントロール機構が存在するのでしょうか?
その答えは生命の維持に関わる問題だからです.私たちの細胞はナトリウム・カルシウム・マグネシウムがなければ,自らが動くためのエネルギーを出すこともできなければ,大切な情報をほかの細胞に伝えてゆくこともできません.
体重50kgの人の体の中には約700gのカルシウムがあります.その約90%が骨の中に蓄えられております.その約1/100が血液の中に,またその1/100が細胞の中に蓄えられています.つまり細胞の中対骨では,実に1/10,000のカルシウム濃度の違いがあります.そしてこの落差こそが生命の維持に不可欠なのです.
さらに骨から溶け出たカルシウムは,食物として経口摂取したカルシウムに較べて,約100倍も組織親和性が高いのです.すなわち脳や心臓の血管に吸着しやすくなります.これが動脈硬化の原因です.
カルシウムが足りないと逆にからだにカルシウムがたまりやすくなる.この現象をカルシウム・パラドクス(カルシウムの逆説)といいます.老後の心配は経済面だけではありません.健康面にも賢い投資を続けて,ミネラルの収支がいつでもきちんとあっているように心掛けてください.
慢性疲労
細胞浮腫(むくみ)
ウツ状態・もの忘れ
上まぶたの痙攣
こむら返り(プールなどで足がつる)
便秘
生理痛
ギックリ腰
不整脈
高血圧
片頭痛
突然死
ミネラルが充分摂取できるか否かは日頃の食習慣に関わります.精製されていない海の塩をとる.三温糖などの精白されていない砂糖にする.マグネシウム含有量の多い海苔やココア・ナッツ類を食べる.国土の狭い日本では,不可能に近いことですが,なるべく無添加・無農薬の米や野菜をとる・・・など.ミネラル不足にならないよう,賢い選択を心掛けてください.
またいつも全身の力が抜けずにいるかたは,それだけでマグネシウムがおしっこのなかへ出ていってしまい,全身のコチコチに拍車がかかります.ストレスを受けないよう心掛ける.時々指先まで力を抜いてみるなどしてみてください.
生命は水の中から生まれました.「私たちは体の内に海をもったまま海からあがった」とも言われます.水を飲むと5分以内に水は大脳に到達します.汚れきった水道管を通ってくる塩素殺菌された水道水を飲むことは自分の命をけがしているのも同然です.塩素は毒ガスに使用される物質です.プールなどの塩素から味覚障害になる人もあると聞きます.
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カルシウムをいくらたくさんとったところで,吸収されないことにはなんにもなりません.
同時に活性型ビタミンDやビタミンKを摂取することも大切です.また適度に日光に当たることも必要です.骨基質をつくるたんぱく質であるコラーゲンの生成のためには,良質のたんぱく質・ビタミンC・亜鉛などの摂取が必須です.
ヴィッテル コントレックス エヴィアン ヴォルヴィック ペ リ エ 牛乳(十勝3.7牛乳) 豆乳(カゴメ)
カルシウム 9.10mg 48.60mg 7.80mg 0.99mg 14.73mg 117.50mg 14.5mg
マグネシウム 1.99mg 8.40mg 2.40mg 0.61mg 0.34mg 22.5mg
ナトリウム 0.73mg 0.91mg 0.50mg 0.94mg 0.90mg 45.50mg 0g
サルフェート 10.50mg 118.70mg 10.00mg 3.30mg
カリウム 0.49mg 0.32mg 0.10mg 0.57mg 195mg
p H 値 7.5 7.3 7.3 7.0
6.0
水のようにがぶがぶ飲むことはできないと思いますが,コーヒーや紅茶に入れるとおなかの調子まで良くなったという方があります.またポタージュを作ってみたり,ババロアにしてみたり,工夫次第で楽しみが増えます.さらなるLOBHAS=ラブハスな世界が広がります.